‐Coffee Maker‐

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そう、耳元ダイレクトで 叫んでやろうかと思ったけど 子供な母はきっと 脳みそに直接書き込んだって 理解出来ないだろうと思う。 ふう…と 飽きれたよう、ため息。 そして、 煎れたてのコーヒーを 母愛用のマグカップに注ぐ。 そして、 ソファーでうなだれる母に すごくすごくいい笑顔で 私は手渡した。 「飲んで。」 「…え?」 いきなり 熱いコーヒーを手渡され、 母はこれまた子供のように 目を真ん丸にして驚いているがおかまいなし。 私は母の隣に座って、 そして 自分用に持ってきた コーヒーに口をつけ、 ニカリと笑った。 「ねぇ、母さん。 分からないようだから 教えてあげる。 このコーヒーが、私の未来よ。 さぁ、飲んでみて。」 母は一瞬きょとんとし、 それでも意味が分かったのか、おそるおそる湯気がのぼるコーヒーに、口をつけた。 「…おいし。」 そう言った母の顔か、 やんわりと緩むのが分かり、 私は まったく…手のかかる母だ と呟くと、母にもたれた。 コーヒーの ほろ苦い香りとともに、 優しくやんわりとした しゃぼんのような母の香りが 漂ってきた。 こんな日常がもうなくなるのか …と思うと、 私の涙腺が少し緩み、 ぽたんと私の手元にあった コーヒーにしずくがおちた。 End
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