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瑠璃が先程すれ違った生徒が言っていた魔物の姿は何処にも無く、代わりに蔦が絡み合った様な巨木の切り株みたいなモノがあり、その前に朱里と銀治が立っていた。
朱里達の話どおりに得体の知れないモノの中から雅輝の気配と別の人物の気配がする。
「これは…玄武?」
「えっ!これが玄武!?」
「あ、うんん、玄武じゃないよ。でも、これは玄武が施した結界みたいなモノかな?」
「結界…」
蔦が絡み合った様な作りを先程の生徒達は魔物と思ったみたいだが、瑠璃にはハッキリと玄武の気配をこの得体の知れないモノから感じていた。
しかし、白虎の様に顕現していたのではない事に少し残念に思っていた。
「どうしようか…」
「まずはミヤ君ともう1人をこの中から出さないと。」
「んーこんなこと初めてだけど、とりあえず玄武に話かけてみる?」
聖獣と会話ができるのかと朱里と銀治が驚いた表情で瑠璃を見た。
それに対して瑠璃は苦笑気味に首を傾げてみせ、何もしないでいるよりは何か試した方が良いと蔦が絡み合った様なモノに両手を付けた。
「玄武…この、結界を解除して中の人達を解放して下さい。」
「「………」」
「…玄武、お願いします。この中に居る方々をお返し下さい。」
瑠璃の問いに何の変化も見受けられなかったが、朱里と銀治は沈黙し様子を伺っている。
玄武の気配から結界を解除する様子が無く、瑠璃はもう一度玄武に願いを伝え、漸く蔦のようなモノが動く気配がした。
「あ、篤人君!」
「え?何で裸…?」
「それより、篤君を保健室に連れて行く!翠と白はミヤ君をよろしく!」
「「うん!」」
蔦が動く気配がして暫くすると中から全裸の篤人が出てきて、銀治は咄嗟に篤人を受け止めた。
驚いている銀治の腕から篤人を半ば奪うように抱き抱えた朱里が、瑠璃と銀治に雅輝の事を頼むと手早くかつ器用に上着を脱ぎ、それで篤人をくるんで保健室へ向かって走り出した。
その行動を呆然と見ていた瑠璃だったが、未だ雅輝は玄武が作り出した結界らしき得体の知れないモノの中から出てきていない事を思いだし、慌ててもう一度両手を付け玄武に話しかけた。
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