エピソードⅠ

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朱里が雅輝の前に居る瑠璃と銀治の後ろに来ると、瑠璃と銀治は立ち上がり朱里に雅輝の前を譲った。 雅輝の前に来た朱里は雅輝の目線に合わせるために両膝をつき、思い詰めた表情で口を開こうとしたが言葉が出てこなかった。 先程まで篤人と保健室に居たらしい朱里が自分に何か聞きたそうにしているが、口を開けたり閉じたりと何か言い難そうにしているのを見て、雅輝は篤人に起きた出来事を知ったんだろうと思うが、それを朱里に確認して良いのかを躊躇って雅輝は無言のまま朱里を見つめた。 「………ミヤ君は、大丈夫だった?」 「…うん。」 しばらくしてやっと声を発した朱里の言葉は雅輝の事を気遣ったもので、雅輝は朱里は篤人に起こった出来事を知ったんだと確信したが、篤人の事を言わなかったと言うことはやはり口外してはいけないと思い、自分は見ていただけだったとしか言えなかった。
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