エピソードⅠ

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瑠璃の言葉に銀治はゴクリと唾を飲み込み、朱里は緊張した顔がさらに強張った。 龍也は無言のまま目線だけで言葉の続きを瑠璃に促した。 「僕達は小さい頃から主様捜索に駆り出され、自分の私利私欲の為に主様を利用しようとする者が多い事を、各々自然と察していたと思う。 それで自分達以外のほとんどの人を警戒してたし、特に貴族階級の上層部を警戒してたよね。」 「まぁねー、ぶっちゃけ次期守護聖獣って言われてるオレ達以外には本心だせないと思ってる。」 「年寄り達は守護聖獣に匹敵する地位を欲しがって主を探していたのは明白だ。」 龍也の言う通りで、守護聖獣ではないがそれなりに地位をもっている奴等は今以上の地位を欲して虎視眈々と狙っている。 といっても、能力が秀でているわけでもなく頭が回るわけではないから、自分達が望む地位は到底叶わない。 だからこそ主を誰よりも早くに見付けて自分の言うことを聞く主に育てあわよくば実権を握ろうと画策しているのだ。 幼い頃の龍也達はそんな事を知らずに言われるがままに主捜索をしていたが、長年捜索を続けて自分達が成長し守護聖獣としての自覚が出てくると、何が主の害なのかを判断できるようになった。 だからと言って主も見付かっていない時に考え無しにそいつ等を敵として扱うのは軽率すぎるし、今はまだ自分達は守護聖獣候補と言う立場で学園の外では立場は高くない。 そんな理由から今までは何も知らない気付かないフリをして、上層部の年寄り達の言う事を聞いているように見せかけていたのだった。 「でもね、そいつらはあまり害が無いんだって。」 「まぁ奴等は能無しばかりだからな。」 「それに、器も小さければ肝も小さいからな。」 散々な言われようだが龍也達の知る上層部の年寄り達は、口先だけで自ら行動に移すことは無い者が多い。 「で、俺達が警戒していた年寄りとは違う敵が現れたと言うことか。」 「うん。それで…紅。」 瑠璃は雅輝の前に両膝を付いている朱里の隣に朱里に向かって両膝を付き、朱里も両膝を付いたまま瑠璃に向き直った。
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