第1章

4/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
 初めての本格的な人物画とあって、僕はいやが上にも張り切っていた。まだ下絵の段階だが、キャンバスに描かれた少女の肖像は、自分でも悪くない出来映えのつもりだった。  当然、モデルになった希も喜んでくれるものと思っていたのだが――。 「これ……あたし?」  キャンバスを覗き込んだ希は、唇をちょっと尖らせて黙り込んでいたが、やがて荷物をまとめてさっさと部屋から出ていってしまったのだ。  口には出さずとも、彼女がこの絵に良い印象を持たなかったことは間違いない。  正直、ショックだった。  やはり自分には才能がないのか――ひどく落ち込んだ僕は、美術展への参加を見合わせようかとさえ思い始めていた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!