第三話

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弟を見ていると、消し去りたい昔の記憶が蘇り吐き気を催す。 惨めで弱虫で甘ったれた過去の自分が弟と重なり嫌悪感で一杯になる。 そんな奴と一緒に居たい訳が無く、寮のある男子高に行くよう半ば家から追い出すようにした。 あんな奴と縁が切れ清々したと晴れ晴れしい思いをしたと言うのに… 何故、また俺の前に現れるんだ? ━━バシッ━ 渇いた音と小さな呻き声がした。バタリと倒れこんだ少年が涙を溢しながら自分を殴った相手を見上げる。 「や、止めてよパパ…」 「何だその言葉使いは。お父様だと何回言ったらわかる!」 またぱしんと音がして少年の頬が赤く腫れる。そして有無を言わさず身体を起こさせると机に座らせた。 「いいか?ここまでの範囲を今日中に終わらせなさい。そうしなければ夕食抜きだ」 「ぐすっ……は、い」 冷たいその口調からは一切の妥協が無くただただ首を縦にして与えられた事をするしかない。だが余程自分に能力が無いのだろう。 失敗を重ね父に殴られる日々が続く。 何故自分がこんなにも頑張らなければならないのか? 父の機嫌を伺わなければならないのか? 誰に問う事も出来ず毎日は過ぎていった。 .
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