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深夜の霊安室
ちょっとした体調不良で入院して約1ヶ月、すっかり健康体になった私は主治医から退院の赦しが出るのを待ちわびていた。
そんなある日の深夜。私は中々寝つく事が出来ずにいた。
少し病院内でも探検してみるか…
ほんの気紛れだったが俄然楽しい事の様に思えてきた。
ベッドを抜け出し病院内を看護師さん達に見つからない様に各階を覗いて行く。
入院棟から下へ進むに連れて病棟は昼間の喧騒が嘘の様に静かに、暗くなっていく。
更に私は歩を進める。地下へ地下へと…
最下層に着く。
…霊安室…あるのかな…
怖さと共に強まる好奇心。薄暗い通路の先にその場所は在った。
不謹慎と知りつつ扉に手をかける…
「君、そこで何をしているんだね?」
突然の問いに恐怖で固まる私。
薄暗い通路の少し先に誰かが立っていた。朧気に見える姿と声は私の主治医か?
「す、すみません。眠れなくて好奇心で…」
顔も見えない相手に謝る私。しかし、相手が私を遮った。
「解っています。暇だったのでしょう?しかし安心しなさい。次にそこに入るのは貴方なのですから」
暗闇で見えない筈の笑い顔の吊り上がった口角が何故かはっきりと見えた…
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