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柚季とユチョンが付き合うきっかけは、彼女からの告白だった。
もともとはスタッフとアーティストという間柄でしかなかったのだが、ある日突然彼女が言い放った。
「元彼に似てるから、付き合って」
当然、面食らったユチョンはその申し出を断り、しばらくののちまた彼女は言い放った。
「ユチョンはあたしを好きになるよ」
やはり面食らうユチョンを余所に、軽やかに笑顔を向けた柚季になぜかユチョンは引かれた。
理由は・・・今となってはなぞだ。
断る事も一瞬頭の隅を過ぎったけれど、壊れかけの機械を見つけて修理する時のわくわく感を柚季に感じた。
それをある日伝えた時、彼女は笑って言った。
「あたしってば、そんなにオンボロ?(笑)」
その日の事を今、柚季が覚えているかどうかはわからない。
とにかく、彼女は忘れやすい。
良いことも、悪い事も含め全てにおいて忘れる。
そこがやはり壊れかけの機械のようで面白かったり、不安だったり・・・。
「覚えてる?ユチョン」
「何を?」
「あたしが、ユチョンに「あたしを好きになる」って言った事」
「もちろん」
「あたし、ついさっき思い出したんだよね。それで、可笑しくて」
「可笑しい?ってゆうか、忘れてたの?」
「そう、で、なんであの時あんな自信あったんだろうって不思議に思ったら、可笑しくて笑っちゃった」
「・・・笑えないよ、柚季」
「(笑)ユチョンには悪いんだけどね」
「はー・・・ま、いいや」
その罪悪感も明日には忘れられている。
だから、責めもしないし、呆れもしない。
そう、慣れっこになってしまった。
ユチョンは、意味のないため息だけを付く癖が付いた事を柚季に指摘されて、そこで改めて自分に呆れてしまった。
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