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東京
生温い雨が降る。
灰色の傘をさして踊る雨雲に憧れて目を閉じてみた
生温いだけだった。
行き交う人間は金網の向こうで無表情なまま
美しいものにすら目を向けずに
そして僕を此処から出してもくれずに
お互い慰めあって生きていた
むき出しの白い肌が唱える冷たい指
傷付いた体温は涙を誘い出すだけ
干乾びたアスファルトが濡れていく
自暴自棄な手の平
持ってかれる体が残さないように心を引っ張っている
地べたを離れる事を恐れているのか
置き去りにしてきた信号
赤ランプの点滅が吠える
少しずつ 少しずつ 潤う唇
今夜此の場所で
竦む肌を撫で付ける最後の刻
開かる胸を抱き締めて涙を拭う
戻らぬ体温 吠える赤ランプ
知らぬ指が救おうとしている
代価に眩む視線
むき出しの白い肌が唱える愛憎
汗ばんだ状態で外に出してもらえるなら
喜んで鳴くさ
美しい物なんて要らない
お互い慰め合って生きて行けばいい
生温い雨が降り注ぐ。
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