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病院の前に停まっていたタクシーに乗り込み、ジェミンが行き先が書いてあるメモを運転手に渡す。
「スミナ、お腹減ってない?」
ジェミンがスミンに振り向くが、スミンはただ窓の外を見つめていた。
「別に。」
スミンはジェミンを見ずに、たった一言だけ答えた。
「そっか、じゃこのまま家に行こう。」
窓の外を見つめ続けるスミンを、ジェミンは静かに見つめた。
「どこに行くの?俺の家とは方向違わない?」
「俺たちの家に行くんだよ。」
ようやくスミンが振り向いてジェミンを見た。
「俺たちの?」
「そう。俺たちの家。」
「どういう意味?」
「着いたらわかるよ。」
決して優しくない視線がジェミンを見つめる。
ジェミンは全てを抱擁するような笑みで、それに答える。
そして、また窓の外に視線を戻すスミン。
ジェミンはそれでもスミンを見つめ続ける。
ソウル中心部にあった病院から40分ほどでタクシーがマンションの前に停まった。
スミンの荷物を右手に持ち、自分のを左手に持って、ジェミンはタクシーを降りた。
「スミナ、どう?さ、入ろう。」
自分の荷物を右手に持ち替えて、左手でスミンの背中をソッと押した。
それに素直に応じるスミンは、ゆっくりと歩き始めた。
自動ドアの中に小さな空間があり、さらに自動ドアがある。
2つめの自動ドアをくぐると、まるでホテルのフロアのようなロビーが出現する。
「おかえりなさいませ。」
フロントで女性が出迎えてくれた。
スミンはジェミンの左手に誘導されるがまま歩いた。
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