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タクシーは車の流れに混じり、走り出した。
「ふー…やばかった…」
座席にどっかりと座り、首だけを傾げてこちらを見た。
「ごめんな。本屋はやばいかな~とは思ったんだけど」
「お、思ったらついてこなきゃいいでしょ!?もう、なんなの!?」
「なんなの…ってヒドいなあ。オレ道分かんないから付いていっただけなのに」
拗ねたように口を尖らせて窓の外を見る。
「あの、どちらへ?」
その時タクシーの運転手がバックミラー越しに尋ねてきた。
私は、どうすんの、と目を向ける。
男は、いや、佐々木拓海はうーんと考えるようにクルリと目を回すと聞いてきた。
「あーえーっと、あ、家どこ?」
「え、御津川の方だけど」
「じゃあ御津川方向でお願いします」
私が目を見開いて唖然とするのを佐々木拓海は肩をすくめて舌をだし、「オレ道知らないから」と一言言った。
「はあああ!?」
私の叫びはむなしく、タクシーは御津川の方角へグインと左折してスピードに乗った…。
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