101人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
お金を払い、タクシーを見送るや否や、佐々木拓海が、「部屋どこ?何号室?」とせかしてくる。
「さ、さんまるに」
「はーやーく!!ここでバレたらオレ最悪なんだって!」
……私はもう最悪なんだけど。
部屋の鍵を鞄から出すと、階段へ向かう。
拓海は目をひんむいた。
いつの間にか、キャップを腰に引っかけて、伊達めがねも外している。
「なに?急がないと、人が来るよ?」
なんとなく焦せりが感染して小声になってしまった。
「なんで階段なんだよ?」
「……なんでもです。嫌ならここでサヨウナラですが」
ボソリと、けれど冷たく聞こえるような声を出してチラリと拓海を見た。
黙ってついてくる気になったらしい。
再び伊達めがねを掛けている。
一応変装のつもりらしい。
最初のコメントを投稿しよう!