冷たくすんなよ。

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お金を払い、タクシーを見送るや否や、佐々木拓海が、「部屋どこ?何号室?」とせかしてくる。 「さ、さんまるに」 「はーやーく!!ここでバレたらオレ最悪なんだって!」 ……私はもう最悪なんだけど。 部屋の鍵を鞄から出すと、階段へ向かう。 拓海は目をひんむいた。 いつの間にか、キャップを腰に引っかけて、伊達めがねも外している。 「なに?急がないと、人が来るよ?」 なんとなく焦せりが感染して小声になってしまった。 「なんで階段なんだよ?」 「……なんでもです。嫌ならここでサヨウナラですが」 ボソリと、けれど冷たく聞こえるような声を出してチラリと拓海を見た。 黙ってついてくる気になったらしい。 再び伊達めがねを掛けている。 一応変装のつもりらしい。
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