夢の舞台

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「今日は良い天気だ」 日本一の「ハコ」車レースであるSUPER GTの開幕を控えた鈴鹿サーキットのピットに俺はいた。 俺にとっては今日がGTデビューとあってさすがに多少の緊張はあったが、意外にも心は落ち着いていた。 「久しぶりだな、矢野」 不意に声を掛けられそちらに目をやると、笑顔で立つ男がいた。 彼の名前は脇阪寿一。同じチームTOM'Sのドライバーでありながら俺と幼馴染みの彼は、小さい頃からカートを始めていたいわゆる「エリート」である。そんな彼の姿に憧れて車好きになったのが、俺の人生に大きな影響を与えたのだった。 「まっ気楽に走れよ」 GTレースでは2年先輩の彼は、そう言うと手を振りながら自らのピットに戻って行った。 俺はまたマシンに目をやった。ピカピカに研きあげられたレクサスSC430を見つめ、俺はゆっくりと深呼吸した。
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