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おい、今の言葉は撤回しな。俺は自他共に認める普通の人間だ」
「現に猫の言葉が分かってしまっているお兄さんが言っても説得力に欠けますし、それは誇ることでは無いです」
こいつ、猫の癖に的確なツッコミを入れてくる。
なかなか、やるな。
「では、そろそろ、お兄さんの名前を教えて欲しいのですが?」
何がそろそろなのか分からないがそんな事を猫風情が聞いてきた。
「……やはり、所詮は猫。甘いな。名など対した意味を持たないものなのだよ。それで俺の中身が変わる訳ではない。それに…」
「……アホ言っていないでさっさと答えてください」
猫に起こられてしまった。
たぶん、人類で初の快挙だろう。
…嬉しくない。
「山田太郎…」
ぼそりと呟くように、ささやく。
「ん?なんて言いました?」
「山田太郎」
先ほどよりも、大き目の声で言ってやった。
今度はちゃんと聞こえたらしい。
「え~と、それは、ペンネームか何かですか?」
「本名だよ!俺が親からもらった名前さ。だいたい、ペンネームとか使うとしてもこんなの付けないだろうが!」
辺りに同級生がいるのも構わずそう叫ぶ。
恥ずかしいとか頭がおかしいと思われるとかの問題じゃない。これは俺のプライドを賭けた戦いなのだ。
「本名ですか…だとしたら、爆笑ものですね。私は笑いませんが…」
それは一種のいじめだ。
笑ってくれた方がまだましだ。
「てめえ、人に名乗らせたんだ。自分も名乗れよ」
どうせ、黒とかタマとかそんな単調でいかにも猫で~す的な名前だろう。
人のことなんて言わせねえぜ。
「ふむ、それも、そうですね。私、海堂夜摩ともうします」
「!!」
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