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返ってきた答えに俺は思わず声を上げた。
その名前は聞いたことがある。
昨日のニュースで、だ。
たしか、隣町で通り魔に襲われて死んだ少女の名前だ。
「その顔を見る限り、私の事件はニュースになっているようですね。テレビに自分の名前を映すのがひそかな野望でしたが、それは叶ったようですね。満足です」
無感情にて無関心、無感動な声で猫―彼女―夜摩が言う。
その言葉は余りにも自然で、それが真実であることを物語るようだった。
つまり、それは、すなわち、彼女が海堂夜摩であるということ。
つまり、それは、すなわち、人間が猫になったということ。
とんだ、ファンタジーだ。
まあ、猫が喋った時点でファンタジーだろうけどさ。
「さてはて、お兄さん、そろそろ、私を飼う気にはなりましたか?」
「ならねえよ!今までのどこにお前を飼いたいと思う要素があったんだ!!むしろ、関係を破棄したくなったよ!!!」
「お兄さん!」
流石に言いすぎたか、夜摩の鋭い目がこちらを睨む。
「その言葉、全てこちらのセリフです!」
「俺まったく、お前の意図が分からなくなったよ!なんだよお前?」
「私?私ですか?私は怖ーい通り魔に殺され、気付いたら猫になってしまっていたかわいそうな可憐な子猫ちゃんですよ」
すまん、最後の子猫ちゃんは比喩なのか?それとも、そのままの意味?
「まあ、なんだかんだでここいら一帯の野良猫の頂点に立ってしまった訳ですが」
「結構、野良猫ライフを漫筆してんじゃねえか!」
「いやはや、こき使えるパシリが居るっていうのはいいものですね。今日、人間のパシリが増える予定ですし」
「おい、最初から俺はパシリ扱いか?猫にパシられるのか?悲しすぎるだろう、俺!」
「まあ、名前ほどでは無いです」
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