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優菜の家族はパパ、ママ、
そして自分の三人暮らし。
靴を脱ごうと玄関の足元を見ると、
見慣れない靴が二足みえる。
両方とも黒い靴、
男物だ。
しかも大きい。
パパのとは明らかに違うもの……。
…お客さんでも来てるのかな…?
何も言わないのも、ナンだなと思い、
一応「ただいま」
と廊下からリビングへ声をかけ、
邪魔にならないように
ソッと足音を忍ばせながら二階へ行こうと
階段に足をかける。
すると突然背中から、
「「「おかえりなさい!」」」
と盛大に声をかけられ、
優菜は驚いて振り向いた。
え、何、何なの!?
今までこんな風に出迎えられる事なんて、
何かのお祝いの時くらいしかない。
「さあ、優菜もこっち来なさい」
リビングから出てきた満面の笑みのママに背中を押され、
なかば強引に入らされてしまった。
「大事な話があるのよ♪」
ママの声がいつもより高くなってる。
朝と全く違う明るい雰囲気のママに優菜はおどおどと戸惑った。
「えぇっ、何の話。
私も聞かなきゃダメ?」
部活もあったし、
正直疲れていて、
本当は早くベッドに横になりたい。
優菜は眉をひそめて、肩を落とす。
上手く断れないまま、そのまま促され、
テーブルの前で大人しくシュンと正座する。
あー、もうヤダ…。
なんだか疲れてるせいか、
表情も硬くなる。
あれ…?
無理矢理リビングに連れて来られ、自分の事で頭が一杯だったせいか、
今更になって、お客さんがこちらをジッと見ている事に気がついた。
テーブルの向こう側。
そこの大きめのソファーに、
二人の男性が座っている。
どちらもスーツ姿。
パパとママは優菜の隣に座っている。
深刻ではないが、真剣な話なのだろう。
彼らの表情と漂う空気が仰々しくて、
居心地がかなり悪い。
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