アリスの遺産と管理人

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「ーーで、ですね、優菜さんには………」 パパとママさえ聞いていれば、優菜が聞いていなくても 別にさして問題はないはずだ。 興味なさげに下を向き、テーブルの角をぼんやりと見つめる。 弁護士さんの話はほとんど聞き流していたが、 ふとした違和感に気づく。 ーーあれ……今、私の名前呼んだ? 同時に延々と続く弁護士さんの声が止んで、 リビングが静かになる。 奇妙な空気に上を向くと、 四人の目が一斉に優菜へ注がれていた。 急に視線を浴びせられて、 特に悪いことを したわけではないのに、 しどろもどろになってしまう。 「へっ? 何? ごめん。今の全然聞いてなかった……」 「ちょっと、優菜聞いてなかったの!? あなた、おばあちゃんのお屋敷を相続したのよ!!」 こんな大事な話を聞いてないなんて、とママは呆れてる。 少し興奮してるみたい。 その様子を見ても弁護士さんは全く動じることなく、 今度は優菜に言い聞かせるようにさっき言った言葉を繰り返した。 「孫の榊優菜に、末広町の洋館を相続させることとする。また、 その証として彼女の所有している銀細工のペンダントを持つことを条件とするーー」 ーーびっくりだ。「また、洋館には主人の優菜が 定期的に住み、 管理をしなければならない」 ーーいや、さらにびっくりだ。 …ーー聞き間違い? 頭の中がグルグルする。 だって未成年だし自分には関係ないと思ってた……。 あまりに突拍子のない内容に、 座ったままなのに目眩がしそうで頭を押さえる。 ちょっと待ってよ。 しかも貰うだけじゃなく、 『住め』…って。 嘘…よね…?
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