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でも、ちょっと待って。
「まさか、私一人で住むわけじゃないよね!?
パパやママも勿論、一緒よね?」
懇願するように両親を見る。
すると遺言書を読み始めてから、ずっと黙っていたパパが顎をさすりながら思案気につぶやいた。
「末広町か……。隣町だったな。
洋館というくらいだから建物は恐らく大きいだろう。
そんな所に優菜一人で暮らすのは、心配だ。まだ嫁入り前なのに何かあったら……」
ところがママは黙りこくっている。
「……ママ?」
眉をひそめて、困ったように頬に手をやり、
やがて意を決したように優菜に真剣な眼差しを向ける。
「優菜、パパの通勤が今の状態でも大変なこと知ってるわよね。
毎朝五時に起きて、六時に家を出てる。
末広町じゃ、もっと早く出ないと会社に間に合わないわ。
これじゃ、パパ可哀想だと思うの」
そうだった。忘れてた。
パパは子煩悩だから、娘の意見を優先しがちなんだけど、
私…パパのこと全然考えてなかった。
「ねぇ、それなら、そこに絶対住まなきゃダメなものなの?
っていうかそもそも、その洋館て必要なの?」
我ながら、至極もっともな質問をしたつもりだった。
ーーが、
「「ダメーーーーー!!」」
夫婦の息がピッタリ合った勢いある声に、
優菜は驚いて背中がのけぞりそうになる。
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