2619人が本棚に入れています
本棚に追加
/528ページ
名刺を手に取り、
自分の第一印象が間違っていない事に、
心の中で頷く。
やっぱり外人さんなんだ…
「長いでしょう、その名前。
レオと呼んで下さい」
「セキュリティー…って事は、
洋館の防犯設備を確認してくれるんですか?」
「ええ勿論です。
これから一緒に建物の中を見てみましょう。
実際に住むのは榊さん、あなたなんですから、不安な所があったらぜひ教えて頂きたい」
いかにも営業用というべき作ったような爽やかな笑みを浮かべ、優雅な仕草で玄関の扉を開けると彼は優菜を中へ促した。
その自然な動きにつられるように、優菜は玄関内に足を踏み入れる。
「…それじゃ、お邪魔します」
思わず優菜は誰にともなく呟いた言葉と共に、
ペコリと一つお辞儀する。
レオにはきっと
これから自分が住むというのに、
なんて可笑しな事をする少女なのだろうと思われたに違いない。
だが彼はほんの少し瞳を細めただけで、他に表情を崩す事なく、再び前を歩き出す。
「それでは早速ですが、
二階へ行ってみましょうか」
「あ…、はい」
中に入ると大きな階段があり、
優菜達は二階へ上がる。
その移動する道すがら、
普段見ることのない
美しい調度品が目に入って、
優菜は感激したように目を瞬いた。
外観も立派だけど、中もすごい。
特注したのだろうか、壁にくっついてるランプや家具も
細かい意匠(デザイン)で作り込まれている。
きっと高価に違いない。
「すごい…ですね」
「フフッ。
これが全部、
貴女の物になるんですよ。
素晴らしいでしょう?」
「うーん、でも
…掃除するの大変ですね」
庶民だから、
ついつい
現実的になっちゃうなあ
優菜にとって高価な調度品を毎日見て楽しむ事よりも、果たしてそれらをきちんと自分で維持できるかが心配だった。
「それは心配ないでしょう。
アリス様がご存命の頃から私どもの会社でずっと管理や手入れをしてきました。
今後もハウスキーパーが定期的に入る事になると思います」
「そうなんですか!?
何から何まで凄いんですね。
でもやっぱり実感がわかないなあ。
ほんとに私一人で平気かしら…?」
なんだか弱気な口調になってしまう。
大丈夫ですよ、
と励ますように上からレオの低い声が落ちてきた。
.
最初のコメントを投稿しよう!