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「北だから、
きっと星が見えるわ。
あっ、天体望遠鏡も持って来なくちゃ」
あまり耳にしないその単語にレオが目を瞬く。
「望遠鏡…ですか?それをどうするのですか?」
「だから…星を見るのよ。私、天文部なの」
レオはよくわかっていないのか、きょとんとしている。
その様子がおかしくて優菜は軽くはにかんだ。
「レオは見た事ないの? 肉眼でも見れるじゃない。星は楽しいよ、そうだ今度望遠鏡で見せてあげる」
浮き足立って話す優菜を見て、レオの青い瞳が優しく細められる。
「まあ、でもキッカケはこれなんだけどねーー」
胸元から、銀色のペンダントを取り出して、レオに見せる。
「……!
これは、確か『星空の落とし物』という名でしたね。この洋館の主が持つ証」
「すごいねレオ。よくペンダントの名前わかったね。弁護士さんから聞いたの?」
瞬間、レオは顔をこわばらせた。
「いえ、昔、祖父から聞いた事があって……。アリス様と祖父は幼なじみだったんです」
「えっ!? おばあちゃんと?
そしたらレオはドイツ人なの?」
おばあちゃんは子供の頃、ドイツで暮らしてたって聞いた事がある。
意外なレオとの接点に少し心が弾んだ。
「ええ、ドイツ人ですよ。ただ祖父のように純血ではないですが……気になりますか?」
さっきまでと違う低い声でレオが囁いた。
「あっ、違うの! 変な意味じゃなくて、おばあちゃんとかペンダントの事知ってる人がいて、ちょっと嬉しくなっちゃって……!」
純血って言ったけど、レオはそういうの嫌そうな顔してた。
…まずい事聞いたかも。
「あと、そうだ。レオ、私に敬語使わなくていいよ。名前も呼び捨てでいいよ」
おばあちゃんの知り合いってだけで、妙に親近感がわく。 優菜のなかでレオは気の置ける人間になりかけていた。
こちらの考えている事が伝わったのか、レオはクスッと笑う。
昨夜の笑い方と似ているようで、どこか違う。
穏やかな微笑みだった。
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