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しばらく洋館の中を二人で並んで歩く。
レオは一階の暖炉に触りながら顎に手を当てた。
「広い建物だからか死角が多いのが少し気になるかな……。
あとバスルームとキッチン、
玄関も防犯用に何か取り付けた方がいいね」
「ヤだな…
もし、お風呂に変な人が入ってきたらどうしよう」
「バスルームの窓から侵入できないよう外壁をリフォームするから大丈夫だよ。
監視カメラも付ける。こういってはなんだが、この洋館はアリス様から管理を任された時から、
一度も空き巣にやられた事がないんだ」
その言葉に優菜は少し安心した。
「そうなの?」
「ああ、嘘じゃない」
これなら、一人暮らししても大丈夫かも知れない。
あ、でも天文部で帰りが遅くなるんだっけ…。
ここは末広町。
実家から学校へは歩いてすぐの距離だが、この町からだと今までの倍以上時間がかかる。
知らず知らずの内に優菜の顔が曇っていく。
そんな彼女の表情の変化にレオはふと気づく。
…でも、そうも言ってられない。パパ達の為だもん
夜遅くに帰宅する。
それが毎日続くと思うと憂鬱になった。
特に夜道は変質者に遭遇する機会も増えるだろう。
「……なんなら、しばらくの間、俺が居ようか……?」
不意に低い声が落とされたが、言葉の意味をちゃんと理解しないまま、軽く返す。
「やだなあ、もう。そりゃあ誰か一緒に住んでくれたら、すごく心強いけど…。そんなこと出来るわけないじゃない」
「いや、ちょうど会社の視察と内情を調べるのに、しばらく日本に滞在する予定なんだ。
別邸もあるけど、そこは祖父の物だし」
「あの…レオって、もしかしなくても……偉い人?」
別邸なんて金持ちくらいしか持ってない気がする。
恐る恐る問うと、返事はなく微笑まれる。
「とにかく…レオがどうだろうと、私は見ず知らずの男の人と住むなんて出来ない! それくらいなら、一人の方がよっぽどいいわっ」
優菜は焦った。
一応まだ嫁入り前なのだ、それは困る。
「どうして? 住んでから不都合な所があるかもしれない。
その時、俺が居たら迅速に対応できる。それに何かあっても……優菜の事は俺が守るよ」
何気に恥ずかしい台詞を口にされ、優菜の顔が赤くなる。
ーー無意識…きっとレオは無意識なんだわ。
「…………ちゃんと部屋に鍵を付けてくれるなら、いいよ」
渋々、優菜は妥協した
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