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チュンチュン、
と雀の鳴き声と共にやって来る清々しい朝――
だが優菜はベッドから起き、
目覚まし時計を片手に持って呆然としていた。
「…やだ、どうしよ…全然眠れなかった……」
今は朝五時…最悪だ。
今日は月曜。
これから長い一週間が始まる。
優菜はこめかみを押さえると溜め息を吐いた。
「新しい環境になったせいか、緊張しちゃったのかなぁ…」
昨日から優菜はこの祖母の洋館に引っ越してきたばかり。
とりあえず寝床の確保と、
学校の教科書はダンボールから出したがまだ全く荷物の整理ができていない状態だ。
「……学校休みたいかも」
帰宅してから荷物の整理をする事を考えるだけで頭痛がしそうになる。
ーーコンコン。
するとドアをノックする音がし、優菜は慌ててもぞもぞと布団から出てドアを開ける。
「おはよう優菜。昨夜はよく眠れた? 」
爽やかな笑みでレオは優菜に声をかけた。
どこにでもあるTシャツとジーンズ姿だが、レオが着ると何でもカッコ良く見えるから不思議だ。
「おはよレオ。あいにくと全っ然、眠れなかったわ…もう眠くて眠くて」
寝ぼけマナコで挨拶を返すと、
空色の瞳が心配そうに優菜の顔を覗き込んできた。
「ホントだ。クマができてるな。…フフっ、どうせ、興奮したんだろ?」
「ちょっ、何変な事いってるの! 興奮なんて、変態みたいじゃない! 私はただ単に緊張しただけよ!」
楽しげにレオは口角を上げる。
「俺はそんな風に言ったつもりは、ないんだけど。…優菜は妄想が激しいなあ」
わざとからかってくることに何だか無性に腹が立つ。
優菜は頬を膨らませる。
「妄想って、もうレオ朝から、し……ーーーーーーー」
視界がブレる。
砂嵐みたいな映像が見える。
ガクン、と体が崩れ落ちそうになる。
貧血だ――
そう思った時には、すでに異変に気づいたレオが優菜の体を支えていた。
「優菜!? どうした」
「何…でも、な… ただの、貧、血…」
血相をかえて優菜を抱きとめたレオだったが、
そのまま横抱きにしベッドへそっと寝かせる。
そうして意識朦朧としている優菜の耳元に優しく囁く。
「…今日は、学校は休もう。ゆっくり眠った方がいい」
レオは優菜の頭を優しくなでると、物音をたてないよう静かに彼女の部屋を出て行った。
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