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まだかすかに雪の残る初春ーー
「ねえ、おばあちゃん。
このお花なんていうの?」
優菜はアリスの庭で
小さな白い花を指さすと
不思議そうに呟いた。
あまり見た事のない
珍しいその花は、
まだ他の花も咲いていないというのに、ハート形の花弁を元気に揺らしている。
おばあちゃんは
優菜のそばへやってくると、
立ち止まった。
その目は優菜の足元にある花に注がれている。
「あら優菜、
可愛らしい子を見つけたのね。
それはスノードロップといって、春の兆しを告げる花なの」
「きざし?」
「ええ。
おばあちゃんの故郷では、
昔、雪の色がなくて…、
スノードロップが雪に色を分けてあげたから、雪は白くなったと言われているの。
そのお礼に雪は春一番の花を咲かせる栄光をスノードロップに約束したと言われているわ」
そうなんだ…!
なんて不思議な言い伝えを持つ花なんだろう。
まるで宝物を発見したかのように優菜の心は躍り出す。
「すごいお花なんだね。
優菜このお花が好きになったよ」
明るい声で優菜はおばあちゃんにしがみついた。
「花言葉は、純潔、初恋…おばあちゃんはこれを好きな人に貰った事があるの。今でも、とても好きよーーー……」
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