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昼下がり。
末広町のスーパー。
早速、優菜達は夕飯の買い物にやって来ていた。
…学校を休んだから、外出するのは気がひけるけど、家に食材がないし仕方ないよね。
夕方だと同級生に遭遇する可能性があるので、昼食を食べた後、二人はすぐに出かけたのだ。
大体の買い物を済ませ、商店街を横切ると花屋があり、優菜はその内の白い花の前でしゃがみこんだ。
「珍しい。この時期に、スノードロップなんて…。
でも綺麗なんだよね、この花」
数本しかないこの花は、寒い所から取り寄せたのだろうか。
すると背後からスッと手が伸び、残り僅かのスノードロップをレオが店員に渡した。
「これ、ください。あとラッピングもお願いします」
予想外の出来事に優菜は驚いてレオの袖を掴む。
「ちょっと待って! それ私にくれるの? だったらいいよ。いらないよ!」
「引っ越し祝いだよ」
花束を優菜に手渡しながら、レオはさり気ない笑みを返す。
「う……ありがとう」
もう買ってしまった物を、むげに返すのは失礼かと思い、優菜は大人しく受け取った。
スノードロップからほのかに漂う香。
照れくさい気持ちとその芳香が優菜の頬を微かに紅く染める。
男の人にこんな事されたのなんて初めてだ。
こういう事されて、嬉しい事は嬉しいけど…
きっとレオは誰にでもやってるのよね…
その証拠にレオは花を手渡してきても、いつもの微笑みのまま。
ただの社交辞令的なものなんだわ。
そう思うと優菜の心は何だか少し複雑だった。
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