優菜と同居人

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次の日、 学校に登校した優菜はさっそく昼休みに友達の和子に質問を浴びせられていた。 「昨日、どうしたのよ、優菜?」 和子の気遣わし気に自分を見る表情が何とも心苦しくなってきて、優菜は苦笑いで返す。 「…ごめん。昨日貧血起こしちゃって。目が覚めたら、昼だったんだ」 「もう、優菜まさか前日に星でも見てるのかと思ったよ」 う…私もホントは星を見たい。 だが実際それどころでなく、今の環境が落ち着くまではゆっくり鑑賞するのは無理そうだった。 「ちょっと…ここの所忙しくて、星は見れてないの」 「えっ、そうなの? ま…優菜にとっては、たまに見ない日があってもいいかもね」 肩を落とす優菜を見て、和子はあっけらかんと笑う。 すると何かを思い出したのか、すぐに表情が硬くなった。 「…? どうしたの、急に真面目な顔になって…」 「いや、優菜がさらに落ち込む情報を思い出した……」 深刻そうな和子の顔に、途端に優菜の表情もそれが伝染ったように曇り出す。 「昨日から臨時の保健医来るの知ってたよね」 肯定を示すように優菜はこくんと頷いた。 「…なんか、急に来れなくなったらしいよ」 「えええええっっ!!!」 「ちょっ! 優菜、声デカい! 恥ずかしいからやめて…」 何事かと周りにいる生徒達の目が二人に一斉に注がれる。 「…来れないって、どういう事よ」 ほんの少しの沈黙の後、優菜は声を抑えつつ問いかけた。 「それがわからないの。みっちゃんの話だと、『一身上の都合』らしいわ」 「そんな…。顧問やってくれるって期待してたのに」 顧問がいないと、天文部の活動は制限されてくる。 どうしよう。 だが待っていれば、いずれ職員は入ってくるだろう。 それが早いのか遅いのかは分からない。でも…遅かったら合宿にも支障をきたすかも知れない。 優菜のあまりの不安げな様子に、和子は拳を握って励ますように声をかけた。 「大丈夫だって優菜。みっちゃんと部長が何とかしてくれる筈だよ!」
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