優菜と同居人

9/26
前へ
/528ページ
次へ
驚いた…本当にーー。 レオは自室のベッドに腰かけ、優菜が分けてくれた白い花をただ黙って見つめていた。 母が死んで祖父に引き取られたばかりの頃、いつも部屋に飾られていた花ーー。 この花を見るたび、あの辛い日々を思い出す。 スノードロップは葬列を思わせる花でもあるため、欧州では贈り物としてはあまり好まれない。 数年後…その意味を知り、愕然とした。 祖父は自分を厭うていたのだーー。 そのため本当は彼女に渡すのを躊躇ったが、何故か無意識に手が動いていた。 レオの顔が歪む。 「…本当に、面白い娘だ。 素直で人を疑う事を知らない」 戸惑いながらも自分と同居する事を決めた彼女。 相手は全く初対面の異性。 普通ならどう考えても断りそうなものなのに。 正直呆れた。 俺とは全く正反対で、初めて会った時はこんな人間が本当に存在するのかと戸惑った。 ――だから、こんな事は簡単だ。 君を信じこませて、 そして裏切る。 造作もない事だ、とレオは嘲るように笑ったーー。 .
/528ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2620人が本棚に入れています
本棚に追加