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「…ああ、俺だ。『彼』に繋いでくれ…」
流暢なドイツ語がレオの口から流れ出す。
やがて携帯電話の向こうから、老齢の男の声が響いてきた。
『お前か…どうだ。アレは手に入ったのか? 』
「いえ、まだです。あのペンダントは常に彼女が身につけているので、
なかなか奪うチャンスがないのです。…ですが、必ずあなたの元へ届けます」
感情のない、冷たい氷のような声で断言する。
『彼』と話す時はいつもこのように変貌した。
一族傘下の企業に対しても同様で、声だけでなく表情すらもなくなるーー。
『…そうか。必要ならばどんな手を使っても、構わん。
アレが私の物になれば、お前の望みを叶えてやる……。約束しよう』
底意地の悪そうな声がレオの耳に響く。
ーー強欲ジジイめ。
……俺はペンダントを手に入れて、早くこの男から解放される。
レオは携帯電話のボタンを乱暴に押すと、そのままベッドに放った。
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