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ーー放課後の屋上。
天文部には小さい天文台がある。
そこに設置した望遠鏡から優菜は夜空を覗きこんだ。
「ああー。今日は曇ってるせいか、見えずらい」
「どれ…俺にも見せて?」
横から鹿野部長がレンズに手をかける。
「ホントだ。せっかく今日はみっちゃん残れるのに…勿体ない…」
部長も残念そうだ。
「ところで榊…お前、体調大丈夫なのか? 昨日、高橋が心配してたぞ」
「はい…すいません」
「お前が星を好きな気持ちは俺だってわかる。だが好きな事を続けるためには、他の事も同時に頑張らなきゃいけない。…あんまり休むと進路に響くぞ」
部長の言うことは、もっともだ。
この前、体調管理について言われたばかりなのに……。
思わずシュンと下を向いてしまう。
すると部長は優しく笑いながら優菜の頭をポンと軽く叩く。
「すまない…今のは言い過ぎたな。これは優菜だけじやなく、俺自身にも当てはまる言葉なんだよ」
「え? 」
「…大学へ進学するんだ。ゆくゆくは気象庁に入りたい。…言っとくが、あくまでも夢だからな」
すごい、部長。
優菜は目をみはった。
少し頬が赤くなった部長の目は生き生きとしている。
「だから榊も、俺がいなくなってもがんばるんだぞ」
え…部長がいなくなる……?
一瞬、何を言ってるのか、わからない。
「そうだ、受験生なんだ部長…」
「そんな泣きそうな顔するな…たまに顔出しにくるから。
それに夏の合宿は絶対参加するから…、…な?」
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