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「ちょっと鹿野君、なに優菜ちゃん泣かせてるわけ?」
振り向くと、みっちゃんが睨んでいる。
うわ、まずい。
「ごめん、みっちゃん何でもないの! 部長がこれから天文部に来れなくなるって思ったら…寂しくなっちゃって……」
「ありゃ、鹿野君、話したんだ」
みっちゃんは困ったように笑った。
そっか…知ってるんだ。
そうだよね、部長なら、絶対みっちゃんに一番に報告するだろう。
私が部長と同じ立場なら、きっとそうする。
……でも二人ともいなくなるんだ。
なんだろう…胸の奥から何かがこみ上げてくる感じ。
「それと…あのね優菜ちゃん、臨時の先生が急に来れなくなっちゃったの。
あっ、でもね、今、校長が代わりの人を探してくれてるから、心配しなくていいからね」
どうしてか、みっちゃんの声が膜がかかったように聞こえる。
気がつけば優菜の頬に涙がこぼれ落ちていた。
「泣かないで…寂しい気持ちは私達も一緒よ。いずれは皆、別々の道を歩かなきゃならないの…。
それが大人になるってことよ」
私の背をそっとさすりながら、みっちゃんはハンカチを貸してくれた。
「それに優菜ちゃんは、これから後輩達をどんどん引っ張っていかなきゃならないのよ」
溢れる涙が止まらない。
それでもみっちゃんの話だけは聞こうと、私は何度も何度も頷いていた。
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