優菜と同居人

12/26
前へ
/528ページ
次へ
「ちょっと鹿野君、なに優菜ちゃん泣かせてるわけ?」 振り向くと、みっちゃんが睨んでいる。 うわ、まずい。 「ごめん、みっちゃん何でもないの! 部長がこれから天文部に来れなくなるって思ったら…寂しくなっちゃって……」 「ありゃ、鹿野君、話したんだ」 みっちゃんは困ったように笑った。 そっか…知ってるんだ。 そうだよね、部長なら、絶対みっちゃんに一番に報告するだろう。 私が部長と同じ立場なら、きっとそうする。 ……でも二人ともいなくなるんだ。 なんだろう…胸の奥から何かがこみ上げてくる感じ。 「それと…あのね優菜ちゃん、臨時の先生が急に来れなくなっちゃったの。 あっ、でもね、今、校長が代わりの人を探してくれてるから、心配しなくていいからね」 どうしてか、みっちゃんの声が膜がかかったように聞こえる。 気がつけば優菜の頬に涙がこぼれ落ちていた。 「泣かないで…寂しい気持ちは私達も一緒よ。いずれは皆、別々の道を歩かなきゃならないの…。 それが大人になるってことよ」 私の背をそっとさすりながら、みっちゃんはハンカチを貸してくれた。 「それに優菜ちゃんは、これから後輩達をどんどん引っ張っていかなきゃならないのよ」 溢れる涙が止まらない。 それでもみっちゃんの話だけは聞こうと、私は何度も何度も頷いていた。 .
/528ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2620人が本棚に入れています
本棚に追加