第一章 ~天災~

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遠目に見えていた裏門辺りの空間がゆらゆらと揺らめいている。 真夏の暑い日に学校のグラウンドに出ると、遠い場所が蜃気楼みたいにユラユラ揺らいで見えるじゃないか。 まさにそんな感じだ。 でも、今は秋も深まる10月下旬だ。 裏門までの山道の木々も真っ赤に染まっている。 それにこんな場所で蜃気楼なんて起こるハズもない。 「なんだ…?あれ…」 俺は不思議に思いながら、自転車を押して近付いてみる。 不思議なことに近付いても近付いても、ずっと同じ場所が揺らめいている。 蜃気楼って、その場所に近づけば揺らめいているようには見えなくなるだろ? 俺は一層早足になって近付いていく。 そして後5メートル程でそこに辿り着くというところまで近付いた時だった。 快晴の空の下なのに、急に辺りが薄暗くなり、木が生い茂ってる場所にも関わらず風が出て来た。 それも尋常な強さじゃない。 俺は怪訝に思い足を止め、右手で顔を風から守りながら、揺らぎが止まらない空間を見つめた。 次の瞬間。 さっきまで揺らいでいた空間から、バチバチと青白い稲妻がいくつもでてきている。 そして、その稲妻はどんどん大きくなり、やがて稲妻の中から黒い球体が現れた。 球体も稲妻と一緒に巨大化していく。 そして直径が2メートルを超える程の大きさになった時、その球体の中心部をみて、俺はゾッとする。 黒い球体の中は、まるで見てると吸い込まれそうな深い闇があり、その闇の中に無数に光り輝く星があった。 マンガやアニメの中で描写される、さながらブラックホールのように見えた。 「な…なんだよ、これッ!」 俺は怖くなって、鞄が前カゴに入った自転車をその場に放り出して山道を駆け下りようとした。 あれを見て、直感的にヤバいと感じとった俺の第6感が告げている。 にげろ…逃げろ…!死にたくない!! しかし、走り出して数歩走ったところで俺の足が止まった。 体が…動かない。 前に走ろうとしているのだが、体があのブラックホールのようなものに、本当に吸い寄せられているのだ。
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