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「う…うそだろ!?」
目一杯前に進もうとするが、黒い球体の吸引力がそれをさせてくれない。
なんとか右足を踏み出そうと地面から足を浮かせた時だった。
強まってきた吸引力のせいで、体が一瞬フワッと後ろに飛ばされた。
「うわぁ!!」
俺は完全にバランスを崩し、地面に体全体でしがみついて、吸い込まれないように耐えた。
今立ち上がろうとすれば、たちまちあの球体に吸い込まれてしまうだろう。
俺は地面にへばりついたまま、身動きがとれなくなっていた。
「くそ……もうヤバいかも…」
そう思いかけた時。
頭の中に聞き覚えのない女性の声が響いてきた。
「偉大なる古の魔導師サクレツィアよ…」
さ…サクレツィア…?
誰だ?それは。
確かに俺の名前はサクレだが、サクレツィアというのは俺のことなんだろうか?
いやいやそれよりも!まずこいつはどこから俺に話しかけてるんだ?
辺りを見回してもそれらしき人影はない。
不思議な出来事の連続に頭が混乱してくる。
「今、ソグムが崩壊の危機に瀕しています。あなたの力がソグムに必要なのです。
私たちの世界に再び、光を取り戻してほしい…」
ソグム?
それはいったい何処のことだろう。
ソグムなんて国名は聞いたことがない。知らない場所だ。
あと、光を取り戻せ?再び?
全く理解できない。わからないことだらけ。
地べたにはいつくばって耐えながら、そんなことを考えていたら、急に自分の体がずるずると後方に引っ張られた。
はっと後ろを振り返ってみると、黒い球体の大きさは直径5メートルほどにまで大きくなっていた。
死を覚悟した俺は、頭の中の声に対して力一杯叫んだ。
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