1話目: 春秋の想い

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「ああ……うん。なんとなく見覚えがあるよ。翔の兄です。」 お兄さんは、にこっと笑って軽く頭を下げた。 「今日は一人で?」 私がお墓の前からどくと、お兄さんはお墓の前まできてしゃがんだ。 「はい。」 私が答えると、お兄さんは優しく微笑んだ。 「わざわざこんなところまで……翔はいい人と知り合ったんだ。」 だんだんと悲しみを帯びる声に 私の胸はもやもやとした霧に包まれていく。 お兄さんは、よくここにくるのかな…… 「そういえば、君の名前……」 お兄さんは思い出したように振り返って言った。 そういえば私はまだ名前を言っていない。 私はあわてて自分の名前を言った。 「春野 美咲です。」
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