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「ああ……うん。なんとなく見覚えがあるよ。翔の兄です。」
お兄さんは、にこっと笑って軽く頭を下げた。
「今日は一人で?」
私がお墓の前からどくと、お兄さんはお墓の前まできてしゃがんだ。
「はい。」
私が答えると、お兄さんは優しく微笑んだ。
「わざわざこんなところまで……翔はいい人と知り合ったんだ。」
だんだんと悲しみを帯びる声に
私の胸はもやもやとした霧に包まれていく。
お兄さんは、よくここにくるのかな……
「そういえば、君の名前……」
お兄さんは思い出したように振り返って言った。
そういえば私はまだ名前を言っていない。
私はあわてて自分の名前を言った。
「春野 美咲です。」
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