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──その日、ぼくは仕事の用事である町に訪れていた。
その町は、ぼくが幼少時代から中学一年生の夏頃に、今現在住んでいる町へ引っ越すまで、約10年間を過ごした懐かしい町だった。
早めに用事を済ませたぼくは、懐かしさのあまり、当時通った小学校や、自宅に立ち寄ってみようと思い立った。
6年間学んだ思い出の小学校を訪れると、校舎はすっかり新しく建て替えられていて、少し寂しい気分になってしまった。
でも、体育館や校庭の片隅にある用具室は当時のままだった。
嗅覚が覚えていたのだろうか?
当時と変わらないニオイが、懐かしさと共に体の奥から込み上げてくる。
ぼくはしばらくの間、校庭で体育の授業を受けている子供たちを、ぼんやりと眺めていた。
当時の事を思い出しながら、子供たちの姿を見ていると、なんだか背中がくすぐったくなった。
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