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4月7日
時刻は午前九時前。
この教室の外では、すがすがしい朝から一転し、一日が動き始める頃だろう。
新学期ということもあり、俺は黒板に張りつけられたA4サイズの薄っぺらな紙に記された指定席に座り、そよ風によって散りゆく淡い色をした桜の花びらを眺めていた。
ひらひらと散りゆく花びらを目で追いかけるという暇つぶしは、ほかの人たちとは違い何もすることのない俺にとって最適なものとは言い切れないが、それなりにハマるものであった。
まぁ、客観的に見たらさぞ虚しいのだろうが。しかしながら、この教室にはそんなくだらない俺を見ようとするやつはいなく、俺が冷たい目で見られるようなこともなかった。
そう、なぜならクラスメートたちは、去年、教室や部活で手に入れた交友関係を深いものにするために忙しく、そして騒がしくしているのだから。
俺はもうあそこの中に入ることはできないのだろうなと、心に出来た空白を、空っぽな器を再確認しながら自らをあざ笑う。
過去にはあのような光景の一部となり、心の底から笑っていたこともあった。
今でも返事くらいはするし、遊びのお誘いに気力があれば付き合うぐらいはする。だけど、それは積極性からはかけ離れたものであり、また、無気力のままに流されることに他ならなく、心の底から楽しいとは思えない。
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