孤独な王女

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グリップが地面にぶつかり、M9A1自動拳銃は軽く跳ね上がる。 出血が多すぎたか……? ウィルはくらくらする頭で、傷の事を思い出した。 小銃の弾丸が腹部を貫通。 そんな傷をあの程度の応急処置で完全に止血できるはずがない。 こうなるのは必然か…… そうしている間にも、症状はどんどん悪化した。 なんだか上下感覚もマヒしてくる。 ウィルは立っていられなくなり、杖にしていたM16A4 MWSを持ったまま、地面に膝から崩れた。 このままでは死んでしまう。 既に一度、死んでるのかもしれないが……。 「おい、大丈夫か?」 消えていく意識の中でウィルは、ふとそんな声を聞いた。 若い女の、声。 ウィルは地面を向いている自分の目を、必死で声のする方向に向けた。 そこには、さっきの女がいた。 銃を構えている、女兵士が。 銃こそ構えているものの、殺意のある表情は見られない。 どうであれ、自分は今、彼女に話しかけられているのだ。 何か答えないとな……。 ウィルは残りの力を振り絞り彼女の方を向く。 すると、彼女は驚いたような顔をしてから、なんだ?と問いかけるような表情をする。 そんな彼女を見て、ウィルはここにきてからの一番の疑問を問いかけた。 「ここは……」 「なんだ!?今何といった?」 女の鋭い声が返ってくる。 最後まで聞こえなかったらしい。 自分でも最後まで言えたかどうかわからないが。 ウィルはもう一度、声を振り絞って、彼女に問いかけた。 「なあ、ここは……どこだ……?」 そう言った直後、ウィルの視界から、すべての物が消えていった。
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