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「私と、王女様、それからアルティミス隊長の三人で運んだのよ~。女三人でここまで運ぶの、すっごく大変だったんだから~。」
笑顔を維持したままそんなことを話していると、彼女は、何か思い出したような顔をして、また話を続けた。
「そうだ。自己紹介がまだだったわね。」
彼女はそう呟くと、ゆっくりと近づいてきて、さっと自分の方に手を差し出す。
「セークレイン王国近衛銃士隊第7小隊副隊長。アイリス・ガルザ。よろしくね。身元が割れるまで、しばらくあなたを拘束することになると思うから、しばらく一緒にいることになると思うわ。」
彼女はそういうと、こちらの手を勝手に取り、無理やり握手してきた。
セークレイン王国……。
全く、聞いたことのない名前だった。
ヨーロッパの方の小国だろうか?
一応高校は出ているが、勉強はとても苦手だったので、聞いた事のない国があってもおかしくはない。
しかしそんなことは、今はあまり重要ではない。
問題は、自分がなぜそんなところにいるかだった。
というか、まだ今いる世界がこの世なのか、あの世なのかすらわかっていないが……
そんなことを考えながら、軽く、アイリスと名乗った彼女にお辞儀をする。
すると彼女は、次に片手を茶髪のローブの女の方に向けて、軽く姿勢を低くした。
ちょうど軽くお辞儀するような形を取った彼女は、改めて自分の方を見ると、また話しだす。
「そしてこの方は…、セークレイン王国国王フレデリック・ディアマン陛下の一人娘であり、王国王女であられる…。」
とても丁寧な口調でそう言った彼女は、少し間をおいた後、言葉をつづけた。
「リネット・ディアマン王女様よ。」
彼女はそう言うと、お辞儀したままの体勢で静止した。
さっきの明るい口調とは違い、随分と改まった感じだった。
すると、すぐさま、彼女にリネットと紹介されたローブで茶髪の女が、こちらを向いてお辞儀した。
「よろしくお願いしますね。」
そう言って彼女はにっこりと笑った。
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