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「私たちは貴様を助け、治療までしてやったんだぞ?それなのに、名も名乗らないのか?」
相変わらずの厳しい言葉遣いと口調だ。
これはもう、話すしかない。彼女達に。
ウィルはそう決めると、口を開いた。
「アメリカ合衆国海兵隊。ウィリアム・クレイグ一等兵。所属は第二海兵遠征軍第二戦闘兵站連隊。」
「ウィリアム…か。私はセークレイン王国近衛銃士隊第7小隊隊長のアルティミス・オブライトだ。」
こちらが名乗ると、彼女はすぐに自己紹介してきた。
「じゃあ、早速質問だ。ウィリアム。」
彼女はすぐ、こちらに質問しようとしてきた。
ここで尋問するのだろうか?
聞かれる内容はたぶん、自分が何故あそこにいて、何をしようとしていたかだ。
どう説明しよう。
まだ、人に話せるほどきちんと情報整理が出来ていない。
とりあえず、自分が物資輸送中に戦闘に巻き込まれた辺りから順に……。
しかし、彼女の質問は、ウィルが予想もしていなかった内容だった。
「アメリカ合衆国とは、どのあたりの国だ?」
「……」
まったくもって想定外の答えに、ウィルは言葉を失ってしまった。
冗談だろうか?
なら何を意図して?
というか、今までの彼女の雰囲気から、こんな状態で意味不明な冗談を言うとは思えない。
どう答えればいいんだ?
少々悩んだ結果、ウィルは正直に、アメリカがどのあたりか話すことにした。
普通に、真実を。
「……大西洋と太平洋の間に挟まれた北アメリカ大陸の一部と、その周辺の諸島を領地とする連邦共和国。」
「大西洋と太平洋とは?」
「…ふざけてるのか?あんた。」
「いや、真面目だ。」
ウィルはその返事に、しばらくまともな答えが浮かんでこなかった。
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