異なる世界

9/11
前へ
/82ページ
次へ
そして、他にも気になることが。 この部屋を見回して気付いたのだが、ここには普通、あるはずのものがなかった。 現代文明の機器だ。 電灯やコンセント、時計やクーラーなど、ここにはそういったものが存在しない。 ベットも改めてみると木製だ。 布団も機械ではなく、人の手で作られた感じの仕上がりだった。 田舎の発展途上国なら、こんな感じが普通なのかもしれない。外も森や草原が広がっているようだし、かなりの田舎なのだろう。 しかし、ここには王女がいる。 なぜここにいるのかは解らないが、王女のいるようなレベルの建物に、そういった文明の機器が皆無というのは少し不自然な感じがする。 それに、護衛に中~近世の兵隊のような格好をさせ、わざわざフリントロックライフルをもたせた近衛部隊を付けるぐらいだ。 貧乏な国家のはずが…… そう考えた時、ウィルの頭に、ある答えが浮かんだ。 中~近世の兵隊の格好。 もしそれが、あえて着せているのではなく、あれが彼女達の通常の装備であるとしたら……。 もしかして、タイムスリップでもしてしまったか? 普通なら、そんなことはあり得ない。 そんなことを考える自体おかしなことかもしれない。 しかし、アフガニスタンの砂漠でRPGを喰らった後から起こっている一連の出来事。 考えなくてもわかるが、おかしいことが多すぎる。 もし実際にタイムスリップとか、そういう展開になっていたとしても、今まで起きたことを考えれば、平常時より驚きは小さそうだ。 しかし、もしタイムスリップしたと仮定しても、いくつか明らかにおかしな点が二つほど残った。 一つは、さっきも言ったように地名。 過去の地名を含めても、やはり聞き覚えのあるものは皆無だ。 しかし、自分が知らないだけという可能性も十二分にある。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

419人が本棚に入れています
本棚に追加