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椎名直樹は目を反らさなかった。
むしろ、反らすことが出来なかった。
初めて襲う、認識の出来る脅威。
「駄目!!」
私は、椎名直樹の前に飛び出していた。
一瞬の間すら惜しいと、影が私の全身を這い上がり、強化された身体で光の前に立ちふさがる。
《悪喰》
影が盾の形を取り、光を喰らう。
「……間に合った」
しかし私は、力が抜けて腰を着いてしまった。
「おい!大丈夫か!?」
椎名直樹はそんな私の隣に来て、心配してくれた。
「うぅん……、まあ良いか、合格」
「何がだよ」
「私の属するギルド、鬼籍の加入テスト」
「テスト?」
カンナは人差し指を立てて、話を続ける。
「そう、鬼憑きになって理性を保てても、未来を諦めているようでは駄目なの。それなら、協会に飼われる犬でしかない。そんなのは嫌だわ、私達は誇りある狼として運命に抗い続ける」
カンナは、そう言って言葉を締めくくった。
「何にせよ、良かったよミカゲが無事で」
椎名直樹は、そう言って私の頭を撫でた。
「え?」
「ほら、名前が無いとか何とか言ってただろ?だから、考えたんだ。」
ミカゲ……、私の名前……。
「……ミカゲ」
「駄目だったかな?」
「そんな事……ない」
私も、名前を貰えた……。
何だか嬉しくて、嬉しくて。
言葉に出来なかった。
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