②鬼籍

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椎名直樹は目を反らさなかった。 むしろ、反らすことが出来なかった。 初めて襲う、認識の出来る脅威。 「駄目!!」 私は、椎名直樹の前に飛び出していた。 一瞬の間すら惜しいと、影が私の全身を這い上がり、強化された身体で光の前に立ちふさがる。 《悪喰》 影が盾の形を取り、光を喰らう。 「……間に合った」 しかし私は、力が抜けて腰を着いてしまった。 「おい!大丈夫か!?」 椎名直樹はそんな私の隣に来て、心配してくれた。 「うぅん……、まあ良いか、合格」 「何がだよ」 「私の属するギルド、鬼籍の加入テスト」 「テスト?」 カンナは人差し指を立てて、話を続ける。 「そう、鬼憑きになって理性を保てても、未来を諦めているようでは駄目なの。それなら、協会に飼われる犬でしかない。そんなのは嫌だわ、私達は誇りある狼として運命に抗い続ける」 カンナは、そう言って言葉を締めくくった。 「何にせよ、良かったよミカゲが無事で」 椎名直樹は、そう言って私の頭を撫でた。 「え?」 「ほら、名前が無いとか何とか言ってただろ?だから、考えたんだ。」 ミカゲ……、私の名前……。 「……ミカゲ」 「駄目だったかな?」 「そんな事……ない」 私も、名前を貰えた……。 何だか嬉しくて、嬉しくて。 言葉に出来なかった。
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