①唐突な始まり

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「名前何て言うんだ?」 私がおにぎりを食べ終えるのを見計らって、椎名直樹は問いかける。 じっと見返すだけの私にまだ自己紹介をしていない事に気付いた。 「俺の名前は椎名直樹、ナオキでいいよ。よろしく」 「……ナオキ」 「そう、それで君の名前は?」 「……ない」 「え?」 「名前は……無い」 「どういう意味?」 「文字通り」 椎名直樹は思考する。 私が名前をつけられなかった理由を。 しかし、考えても仕方ないので、私に向き直ると私が左手を見つめているのに気付いた。 「どうしたの?」 「……手」 さっきの痣の事だろうと椎名直樹は思い当たる。 「大丈夫だよ。そんなに痛く無いし」 しかし私は、無視して椎名直樹の手を掴む。 椎名直樹は不意に手の痛みが引いたので見てみると、痣は私の手に移っていた。 しかし、それは直ぐに何事も無かったかの様に消えてしまった。 「……ごめんなさい」 「何が?」 「痛くしたから」 「だから大丈夫っていったじゃん」 「……普通なら悶え苦しむ程度の痛み何だけど」 「え?」 どうやら、椎名直樹は知らないうちにとんでもない攻撃を受けていたらしい。
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