1人が本棚に入れています
本棚に追加
「名前何て言うんだ?」
私がおにぎりを食べ終えるのを見計らって、椎名直樹は問いかける。
じっと見返すだけの私にまだ自己紹介をしていない事に気付いた。
「俺の名前は椎名直樹、ナオキでいいよ。よろしく」
「……ナオキ」
「そう、それで君の名前は?」
「……ない」
「え?」
「名前は……無い」
「どういう意味?」
「文字通り」
椎名直樹は思考する。
私が名前をつけられなかった理由を。
しかし、考えても仕方ないので、私に向き直ると私が左手を見つめているのに気付いた。
「どうしたの?」
「……手」
さっきの痣の事だろうと椎名直樹は思い当たる。
「大丈夫だよ。そんなに痛く無いし」
しかし私は、無視して椎名直樹の手を掴む。
椎名直樹は不意に手の痛みが引いたので見てみると、痣は私の手に移っていた。
しかし、それは直ぐに何事も無かったかの様に消えてしまった。
「……ごめんなさい」
「何が?」
「痛くしたから」
「だから大丈夫っていったじゃん」
「……普通なら悶え苦しむ程度の痛み何だけど」
「え?」
どうやら、椎名直樹は知らないうちにとんでもない攻撃を受けていたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!