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「名前何て言うんだ?」
私がおにぎりを食べ終えるのを見計らって、椎名直樹は問いかける。
じっと見返すだけの私にまだ自己紹介をしていない事に気付いた。
「俺の名前は椎名直樹、ナオキでいいよ。よろしく」
「……ナオキ」
「そう、それで君の名前は?」
「……ない」
「え?」
「名前は……無い」
「どういう意味?」
「文字通り」
椎名直樹は思考する。
私が名前をつけられなかった理由を。
しかし、考えても仕方ないので、私に向き直ると私が左手を見つめているのに気付いた。
「どうしたの?」
「……手」
さっきの痣の事だろうと椎名直樹は思い当たる。
「大丈夫だよ。そんなに痛く無いし」
しかし私は、無視して椎名直樹の手を掴む。
椎名直樹は不意に手の痛みが引いたので見てみると、痣は私の手に移っていた。
しかし、それは直ぐに何事も無かったかの様に消えてしまった。
「……ごめんなさい」
「何が?」
「痛くしたから」
「だから大丈夫っていったじゃん」
「……普通なら悶え苦しむ程度の痛み何だけど」
「え?」
どうやら、椎名直樹は知らないうちにとんでもない攻撃を受けていたらしい。
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