①唐突な始まり

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「はぁ……」 私はお湯に浸かって、深く息を吐いた。 暖かさが、身体に染み込んでくるのを感じる。 疲れが身体の外へと染み出して、まるで全身がほどけていくようだった。 つまり、とてもリラックス。 と言うか、極楽。 私は、お湯に浸かりながら考える。 椎名直樹は良い人だ。 見ず知らずの私にここまでしてくれる。 椎名直樹は変な人だ。 普通の人なら引くなり怖がるなりするはずなのに、私の能力を見ても普通に接してくれた。 能力もあまり効かないし……。 最初は何か裏があるのかとも思ったけれど、見ていてわかった。 それは有り得ない。 椎名直樹は純粋なお人好しなんだ、きっと。 それなら、これ以上の迷惑はかけれない。 ……私は、好意を返せないから。 頭からシャワーを浴びる。 温度はぬるめだが、温まった身体には丁度良い温度だった。 髪と身体を洗い、もう一度お湯に浸かる。 それでも、 今日だけは、 彼の好意に甘えさせて貰おう。
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