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冷たい風が、頬を撫でた。
ぬけるように青い空と、わっさわっさと咲き誇る桜の木には少々時期外れなそれは、わたしの心中を途端に曇らせた。
冬は嫌いだ。
その匂いはどこまでも淋しくて、その色はどこまでも悲しい。
せっかくこうして花が咲く季節になったって、いつでもどこかにこびりついたまま、離れない。そして不意に、そう、今みたいに、現れては、否応なしに記憶を引きずり出していくのだ。
木島花子、17才。
亀亀高校3年。
成績優秀、容姿淡麗。
視線で人が殺せるなら、マシンガン10丁にタイマンはれるんじゃないかってぐらいに冷たく光る瞳を持つ彼女は、いつにもまして剣呑さをたたえながら、席についた。
セミロングの黒髪が、もの憂げにゆれる。
年中発情期を自負するセブンティーン男子の熱い視線を、その氷点下な目線で冷ましていく花子の耳に、女子高生特有のキャピキャピした声が入ってきた。
「ねぇ、ほんとかなぁ」
「でもこの時期にねぇ」
「ちょっとかっこいいらしいよ?」
「「「まじでー!?」」」
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