第一章

8/56
前へ
/86ページ
次へ
今更だが、この軍人は右足を引きずって歩いている。 怪我でもしているのだろうか。 椅子に座る際、顔の端を歪めた。 相当痛いんだろうな。 「これから、面接を始めたいと思う」 立っていろ、と。 一応、軽く会釈。 「面接と言っても、君を落としたりはしない」 表情も変えず、淡々と喋っていく。 「これからいくつかの質問をする。完結に答えてくれ」 黙って頷く。 「名前、年齢を」 「東雲和真、十七です」 「しの、のめ?」 男の表情が初めて変わった。 「何か?」 「いや、珍しい名前だと、思ってな」 確かに俺の名前は珍しい。 だが、それだけじゃない。 この男、あからさまに驚いた。 「十七とは随分と若いが、何故入隊を?」 話を逸らされた。 仕方がないが、質問には答えねばならない。 「死に場所を探しに来ました」 「死に場所、か」 男は目を閉じて、何かを考えている。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加