序章

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二〇十二年、十二月二十三日、二十二時四十六分。 それは確かに起きた。 人類が滅亡する事はなかったが、一つの区切りが起こった。 米軍の火星探査機【アポカリュプス】から送られてきた一枚の画像。 その後に送られてきた、数分の動画。 そして、直後にアポカリュプスが消滅した。 米軍の宇宙センターは沈黙していた。 聞こえて来るのは、呼吸音と唾を飲み込む音。 アポカリュプスがどうして消滅したのか。 そんなことはどうでも良かった。 問題なのは、アポカリュプスから送られてきた画像と動画だ。 「ああ、神よ……」 そんな中、一人の年老いた男が呟いた。 男は、胸元にある十字架を両手で包み、俯いていた。 「今日という歴史的な日を与えて下さって、感謝いたします」 その場にいた全ての者が、男の言葉に耳を傾けている。 男は明日、この宇宙センターを退職する事になっていた。
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