第一章

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中に入ると、まるで別の世界に来たような、不思議な感じがした。 ヨーロッパの貴族なんかが居そうだが、そんな華やかな物じゃない。 緑はあるが、花がない。 季節の問題もあるかもしれないが、どことなく違う気がする。 人工的に作り出された不自然な空間、かな。 「あまりキョロキョロするな。みっともないぞ」 バレていた。 門番の背中を見ながら歩くこと数十秒。 建物の入り口に着いた。 そこには、一人の軍人がいた。 四十後半位だろうか。 顔の至る所に皺がある。 こういう偉そうなやつは、髭を生やしてると思ったんだがな。 綺麗に剃られている。 軍帽を深くかぶり、目が半分しか見えない。 その目は鷹の様に鋭く、俺の目を射抜いた。 「入隊希望者一名を連れてまいりました!」 敬礼をした後、大きな声で言った。 その声には若干、緊張の色が混じっている。 俺を見下しておいてこれか。 所詮、出世する事しか考えていない犬か。
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