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でも、しょうがないと思っている。
俺は、本当に使えない奴だったから。
仕事は忙しかった。40度近い熱でも休まなかった。休めなかった。
それでもある意味幸せだった。
忙しさに、すべてを奪われていたから。
すべてを忘れることが出来たから。
会社に入ってから3年。
いまだ使えない奴扱いの俺に唯一笑顔をみせてくれる娘がいた。
その年に入ってきた新人の女の子だ。
「おはようございます」の一言と、その笑顔が俺を癒してくれた。
「変われるかもしれない」
すでに人を好きになることを諦めていた俺がそう思った。
数ヵ月後。
いまだに笑顔を見せてくれる彼女を夕飯に誘った。
誘えた自分が誇らしく思えた。別の人間かと思った。
彼女の答えは「もちろん、行きます。どこに連れてってくれるんですか?」
生まれて初めて、生まれて良かったと思った。
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