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「お前、この仕事向いてないよな?自分でもわかるだろ?辛いだけだぞ?こんな仕事続けても。まだ若いんだから転職でもしてみたらどうだ?」
ある時、上司から告げられた。
俺は馬鹿だけど、上司が何を言いたいのかは分かった。
次の日、辞表を出した俺に上司はうれしそうに「お疲れさん!」
同僚たちはいつものように仕事をしていた。
いつも以上に忙しそうに。
その日夜遅くまで公園で時間を潰した。
家に帰った俺に、母親がいつもの笑顔で「お疲れ様」といった。
「会社、辞めてきたよ」と言った俺に、一言。「お疲れ様」
同じ笑顔だった。
数ヵ月前。
職を探していた俺が、いつものように家に帰ると母親がいなかった。
夜遅くに電話が鳴った。
病院からだった。
母親の声だった。
いつもの優しい声で、具合が悪くなったので医者に言ったら入院するように言われたこと。今日はもう面会できないから、明日必要なものを持って病院に来て欲しいことなどを告げられた。
次の日、保険証やら着替えやらをもって病院に行った。
癌だと、医者から告げられた。
末期の胃癌だったそうだ。
もう、助からないらしい。
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