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先日降った雨のせいか、森の中を駆ける一人の少年の足跡が枯れ葉と共に残る。
しかし、彼の足跡より少し大きめの獣のような足跡がある。どうやら、この大きめの獣を追い掛けているようだ。
木々の間から漏れ出す月の光に、彼と獣の姿が一瞬だけ照らされる。
少年は少し長め灰色の髪に、淵なし眼鏡とグラスの中にある鋭い青い目が印象的で、手には自身の体長ぐらいの槍がある。
一方、獣は身体中が黒く染まった2メートル以上の犬のような姿だ。
「待ちやがれ、犬っコロ!!」
眼鏡少年が叫ぶが、黒い犬は止まることを知らず、少年から逃げて行く。
あの犬も【イリーガル】と呼ばれるものの一つだ。イリーガルは走る度に黒い燃えカスのようなものがボロボロと落としていき、彼に居場所を教えてしまっているのだ。
「ちっ」
眼鏡少年は舌打ちをし、表情を険しくする。その時、彼の右耳に付けられているイヤホンのような物から、声が聞こえ始める。
『ちょっとロウ。早く動き止めなさいよ!【浄化】ができないじゃない!』
「姐御、簡単に言わないでくれ!相手も魔力で強化されてんだからよ!」
『毎回毎回言うけどさ……姐御じゃなくて、カルティエ副隊長でしょ!』
「すまねぇ姐御!」
『あー、もう!!ロウ、一瞬だけアレを止めれる?浄化じゃなくて、普通の弾で足止めするから、その間に動きを封じて!』
ブツンッと通信が切れる。
「やってみっか」
ロウと呼ばれた少年はため息混じりで呟くと、走りながら槍を構える。
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