17人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇねぇ、エト君。君は紅茶をいれるのが得意なんだよね?」
突然、花を飛ばしながらやってきたそいつは、へらへら笑いながらそう言った。
「…誰から聞いた」
自分のことを必要以上に言い触らす趣味はない。紅茶のこともそうだ。
「ん?いっちゃんから聞いたよ」
「いっちゃん…?」
「いつき」
そんなやつ、いただろうか。
「…紫の髪で、右側でお団子にしてて…えーと、なんか企んでそうな顔してる…」
思い出した。
「情報屋か」
困った顔をするこいつを見れば、おそらく、ろくなことはしないんだろう。
とりあえず当初の話題に戻った。
「で、なんで俺を名指しした」
いやな予感しかしないが、一応聞いてみる。
「いっちゃんのきまぐれだよ。俺がお菓子を作って、君が紅茶をいれる。企画は斎。俺たちに拒否権はない」
あきらめたような、妙に慣れている様子を見れば、一度ならず前例があるようだ。
「…拒否れば?」
「トップシークレットの暴露」
最悪じゃないか。
「いっちゃんだから容赦しないと思うし…」
イサはどこか遠くを見ていた。
前回の被害者でも思い出したんだろうか。
「しかたないな…」
なるべくなら関わらない。関わりたくない、が。
「お菓子はおまえが作るんだろ?茶葉と合わないものを出されたら困る。今から時間はあるか?」
たまには、こういうのもいいかもしれない。
「――…おまえ、情報屋のなんなの」
「…きょうだい、兼、幼なじみ…」
「(苦労してんだな)」
最初のコメントを投稿しよう!