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「ていうか、鏡谷の奴、毎回有給を取るタイミングが絶妙に良いと思わない?」
副班長が出ていったのを見届けて、鋼ヶ崎が怪訝そうに、隣の空城に話を振った。
「まあ、そうだね。単に運が良いだけだと思うけど、イリーガルが出た時に限っていないよな、涼介って。殆ど姿を見ないよ」
素直に同意する空城。
顔を見合わせて、呆れたように笑う二人の頭の中には一人の少年が浮かんでいた。
切れ長の目が鋭利な印象を与える、美少年と呼んでも差し支えない線の細い少年。
額に掛かるほどまで伸ばされた、癖の無い綺麗な茶色い髪は染めたものだ。
空城と鋼ヶ崎の回想の中で、少年は高い自尊心が見て分かる微笑を浮かべて機関銃のように皮肉を飛ばしまくっていた。
そんな少年の名前は、鏡谷 涼介。
第二班所属上等兵である。
そして、空城と鋼ヶ崎の親友で悪友である彼は、有給を取って――サボっていた。
「おい、空城に鋼ヶ崎、何時までも喋ってないで早く準備しにいけ! 鏡谷はもう二度と戻ってこないんだからな」
部屋から出て行こうとした先輩が、鏡谷について盛り上がっている二人を注意する。
最後の言葉は勿論冗談だ。
空城と鋼ヶ崎は、慌てて先輩に続いて部屋から出ていく。
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